この記事は特別支援学校に入学予定のお子さんがいる親御さんに向けて、特別支援学校の1日の流れや親御さんが知っておくと良いプチ情報について書いています!※この記事に出てくる特別支援学校は知的障がいがあるお子さんが通う特別支援学校を想定しています。
はじめに
幼稚園や療育機関での活動も終わりに近づき、就学通知(入学通知)が届いたご家庭も多いのではないのでしょうか?事前に相談や協議を重ねたとはいえ、我が子が特別支援学校に就学することになると決まった時はショックを受ける親御さんも多いようです。
お子さんが生まれる前は障がいがある子どもへの関心は全くなかったという親御さんも珍しくありません。
「特別支援学校って何をするのだろう・・・」「先が見えなくて不安・・・」
安心してください!大丈夫です!!なるべくわかりやすく、特別支援学校について簡単に説明します。
私も妹が特別支援学校に通っていたので、障がいがある子どものいる家族の気持ちはわかります!
時間割をチェック!
まずは時間割からです。下の表のような流れです!(以前私が勤務していた学校や友人の勤務している学校の情報をもとに作成しました)
1年生であれば、大体8時50分前後に登校して13時30分頃下校という流れが多かったです!
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | |
1 | 朝の会 日常生活の指導 | 朝の会 日常生活の指導 | 朝の会 日常生活の指導 | 朝の会 日常生活の指導 | 朝の会 日常生活の指導 |
2 | 自立活動 | 自立活動 | 自立活動 | 自立活動 | 自立活動 |
3 | 生活単元学習 | 図工 | あそび | 図工 | 生活単元学習 |
4 | 国語・算数 | 音楽 | あそび | 音楽 | 国語・算数 |
給食 | 給食 | 給食 | 給食 | 給食 | |
5 | 体育 | 日常生活の指導 | 体育 | 日常生活の指導 | 学活 |
多くの特別支援学校は地域の学校よりも授業開始時間が遅いです。通学範囲が広いためスクールバスを運行している学校が多いことや特別の時間割を組んでいることが影響していると思います。一方聴覚障がい特別支援学校や視覚障がい特別支援学校は地域の小学校同様の登下校時間、時間割で学習を進めることも多いです。
時間割を見て、「自立活動・・・」「日常生活の指導?」、「生活単元学習??」「あっ、あそび!?」と思った親御さん、安心してください。次の「教育課程について」で簡単に説明します。ちなみに特別支援学校の授業時間は45分と決まっていません。30分や60分と言った設定もあります。
教育課程について
教育課程とはなんぞや?となると長くなりますので、親御さんであれば「その学校でどのような勉強や行事を、どの程度行うのか」といったざっくりな理解で良いと思います!
特別支援学校の勉強の特徴として理解しておきたいのは「自立活動」と「各教科等を合わせた指導」です。(特別支援学級や通級による指導でも設定されることがあります)この2点があるということは親御さんもおさえておきましょう!
ここからは少し専門的になります。興味のある方はじっくり見てね⭐️
難しそう・・・と思った方はクラス人数の項にゴー!
「自立活動」について
自立活動は特別支援学校に設けられた指導領域です。(特別支援学級でも設けられています)自立活動の目標は下記の通りです。
個々の生徒が自立を目指し、障害に基づく種々の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、もって心身の調和的発達の基盤を培う。
自立活動学習指導要領より
「自立」とは 、児童生徒がそれぞれの障がいの状態や発達の段階などに応じて、主体的に自己の力を可能な限り発揮し、より良く生きようとすることです。
「心身の調和的発達の基盤を培う」とは 、 発達の遅れや不均衡を改善したり発達の進んでいる側面を更に伸ばしたりすることによって、遅れている側面の発達を促すとともに 全人的な発達を促進することです。 【島根県教育センター資料より】
ちょっと、いえ、かなり難しいですよね。
障がいによって、学習場面や日常生活において様々なつまずきや困難が生じます。
例を挙げるのであれば、ある障がいによって体幹が安定しないため、良い姿勢で座ることが難しい→学習の際姿勢が崩れる→書く活動がスムーズに進まない→なかなか文章を書くことができないといったものがあるでしょう。
その際、時間割に定められた自立活動の時間に、体幹を安定させるような遊びや、マッサージのようなことを行います。毎日じっくり取り組むことで、体の使い方を学んでいくのです。学校によっては自立活動教諭という自立活動の専門家が配置されていますので、その子の良さや課題に着目しながら自立活動全般に関する助言や指導を得ながら学習に取り組みます。
また、自立活動は上の時間割にある2時間目の授業だけで行うものではありません。学校生活全般で行っていくものです。他の授業や給食の時間などにも意識的に活動に取り組まれていることがあります。和歌山県の特別支援学校HPよりイメージ図を引用しました。
「各教科等を合わせた指導」について
特別支援学校では各教科等を合わせた指導として「日常生活の指導」や「生活単元学習」、「あそび(の指導)」など多くの親御さんが、経験したことのないであろう授業が設定されています。各教科等を合わせた指導ができる法的根拠は下記のとおりです。
特別支援学校の小学部、中学部又は高等部においては、知的障害者である児童若しくは生徒又は複数の種類の障害を併せ有する児童若しくは生徒を教育する場合において特に必要があるときは、各教科、特別の教科である道徳、外国語活動、特別活動及び自立活動の全部又は一部について、合わせて授業を行うことができる。
学校教育法施行規則130条第二項
国語や算数、自立活動や道徳と教科や領域の学習要素が合わさった学習と考えていただければ良いと思います。
日常生活の指導、生活単元学習、あそび(の指導)それぞれに特徴があるよ!
参考:全日本特別支援教育研究連盟『平成29年版特別支援学校心学習指導要領ポイント総整理』2018東洋館出版社
日常生活の指導
生活科を中心に、特別活動など広範囲に各教科の内容が扱われます。
礼儀作法や、衣服の着脱、排泄、手洗い、きまりを守るといった日常生活や社会生活において習慣的に繰り返される基本的な内容をある程度ルーティン化して取り組みます。
朝の会やその前後で、着替えをしたり、健康観察をしたり、その日の予定を確認するといった活動が日常生活の指導として設定されていることが多いです。
生活単元学習
児童生徒が生活上の目標を達成したり、課題を解決したりするために、一連の活動を組織的・体系的に経験することによって、自立や社会参加のために必要な事柄を実際的・総合的に学習するものです。障がいがあるお子さんは、机上で学習したことが実生活に結びつきにくいことが多くあります。特別支援学校では経験を通して学ぶということを大切にしています。
季節に関連する単元、学校行事に関連する単元等、子どもにとって身近で興味関心の高い学習が設定されます。「七夕会をしよう!」「宿泊学習に向けて!」「野菜を植えよう!」といった内容です。
遊び(の指導)
遊びの指導は、全力で遊びます。遊びを学習活動の中心に据えて取り組み、身体活動を活発にし、仲間との関わりを促し、意欲的な活動を育み、心身の発達を促していくものです。特に小学部入学段階のお子さんであれば、幼稚園などとの接続を意識したスタートカリキュラムが重要になるため、大切にしたい学習です。遊びの指導では生活科を中心に体育などの各教科に関する広範囲の内容が取り扱われ、人との関わりやルールについても実際の活動を通して学んでいきます。なお、中学部以降に設置されている例は見たことがありません。
クラスの人数や持ち物について
学級編成は一クラスに6人の子どもと2人の教員が配置されることが多いです。知的障がいと他の何らかの障がいがあるお子さん(重複障がい)の場合、一クラスの子どもの数は3人です。その際も教員は一クラスに2人配置されることが多いと思います。授業は学年全員で行うものもあれば、学級ごと、小集団ごと、個別学習など様々です。クラスの枠にとらわれない活動が多いのも特別支援学校の特徴かもしれません。
持ち物は学校によって様々ですので一概には言えませんが、持ち物に名前を書くのは必須です。同じクラスの子どもと持ち物が重なることは良くあります。コップや食具などを持ってきて欲しいとお願いされているご家庭もあるかと思います。不明な点があれば、遠慮なく学校に問い合わせてください。また、地域の学校では持ってくることが禁止されているようなもの(人形や漫画、お菓子など)も、学習の一環として取り扱うことがあります。
人形や漫画は気持ちの学習に、お菓子は舌の使い方や口の中の動きを確認するのに使ったことがあるよ!
就学奨励費について【重要】
特別支援学校に就学するお子さんは国やお住まいの自治体から就学に必要な経費の一部もしくは全額を補助してもらえます。詳細は各自治体や入学予定の学校に問い合わせてみてください。
(年間の所得合計によっては補助が受けられないことがあります・・・悲しい。)
給食費や、付き添いの方の交通費だけではなくノートや筆記用具、水着、上靴、雨靴、カッパ、制服、ランドセル・・・補助の対象となるものは多くありますので、子どものために買ったもののレシートは捨てないでくださいね!!!※一部領収書が必要なものもあるようです。自治体によって違いますので遠慮なく問い合わせをしてみましょう。(参考:春日井市奨励費の対象となるもの)
使える制度は積極的に活用していきましょう!!!
個別の教育支援計画・個別の指導計画について
特別支援学校に通うお子さん一人ひとりに、個別の教育支援計画と個別の指導計画が作られているよ。
個別の教育支援計画は長期的な視点で乳幼児期から学校卒業後までを通じて一貫して的確な教育的支援を行うことを目的しています。また、教育(学校)、だけではなく福祉、医療、労働等の様々な関係機関、関係部局と連携協力しながら作成します。家族情報や障がいの状態、1日の過ごし方将来の夢などを書く欄があります。(自治体によって違います)どのような福祉事業所を利用しているか、どこの病院に通っているか、複数の関係機関で子どもについての話し合いをした際の記録なども掲載します。
(参考:文部科学省「個別の教育支援計画の参考様式について」2023年2月アクセス)
個別の指導計画は個々の児童生徒の実態に応じて適切な指導を行うために学校で作成されるもので、教育課程を具体化し、障がいのある児童生徒など一人 一人の指導目標、指導内容及び指導方法を明確にして、きめ細やかに指導するために作成するものです。「国語では一年間で●●の力をつけます!そのために△△の勉強をします、その際に■■の教材を使います!」といったことが書かれています。学校によって様式に差があります。
親御さんも作成に協力することがあります。お子さんの良いところや、頑張ってほしいことなどを先生に伝えられるようにしておくと良いと思います!
そもそも特別支援学校って
特別支援学校は何らかの障がいがある子どもが学ぶ学校です。法律で対象となる障がい種が定められています。
特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的 障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含 む。以下同じ。)に対して、幼稚園、小学校、中学校 又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、
学校教育法72条
自立を図るた めに必要な知識技能を授けることを目的とする。
障がいの「程度」も法律で決められているよ⭐️
詳しくはこちらを見てね!(高松市総合教育センター資料)
教育を受ける場所 | 対象となる障害の種類 | |
特別支援学校 | 通学する特別支援学校 (病室や自宅の場合もある) | 視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱 |
特別支援学級 | 通学する小学校・中学校 もしくは近隣の学校に設置されている特別支援学級 | 知的障害者、肢体不自由者、病弱者及び身体虚弱者、弱視者、難聴者、言語障害者、自閉症者・情緒障害者 |
通級指導教室 | 通学する小学校・中学校・高等学校 もしくは近隣の学校に設置されている特別支援学級等 | 言語障害者、自閉症者、情緒障害者、弱視者、難聴者、学習障害者、注意欠陥多動性障害者、肢体不自由者、病弱者及び身体虚弱者 |
特別支援学校の中には、遠方から通学する子どものために寄宿舎がある学校もあります。また、病院が併設された学校もあります。それぞれの学校に特色があります。
終わりに
特別支援学校の1日の流れと言いながらも、+αの方が長くなってしまいました。
特別支援学校の先生方は、皆さん暖かく、熱心です。親御さんの話を真剣に聞いて子どもの成長を真摯にサポートしてくれます。安心してください。お子さんにも親御さんにも楽しいことがたくさん待っていますよ!
この記事が何かのお役に立てば幸いです!
コメント